大町市指定有形文化財 第三十九号
大黒町追分の石造大黒天像・附 版木
平成八年三月二十五日 指定
石造大黒天像は、花崗岩製で高さ百七十二cm、幅百五十七cm、厚さ四十cm、大黒天像を支える礎石は安山岩製で横幅二百五十cm、奥行百七十cm、高さ三十cmの大きさを計り、全体の高さは二m程になります。
この大黒天像は、松本平では最も古く、最も大きい像であり、彫刻技術も優れたものであります。また、この像の建立を機会に町名を大黒町と改めたという経緯もあり、造立の由来、あるいは年代も作者も特定できるものであり、石造文化財から信仰の歴史を考える上にも重要なものであります。
石像背面には陰刻銘があり、それによると江戸時代末期の嘉永五年(一八五二年)三月にこの像は建立され、当時新町と言われていた大黒町が施主・世話方となって、高遠領非持村より出稼ぎに来ていた二人の石工、伊藤徳十・留十によって造られたことがわかります。
また、大黒天像が建立された由来については、当時町内中に配られたとみられる趣意書の「版木」が同町曽根原家に保管され、大黒天像と併せて指定保存されています。
大町市指定天然記念物 第三十八号
大黒町追分のシダレザクラ
平成七年四月二十六日 指定
シダレザクラは別名イトザクラ・シダレヒガンなどと呼称され、バラ科サクラ属の落葉高木です。エドヒガンの変化したもので、全般的に病虫害に弱く、樹齢が短いため大怪木が少ないものです。
大黒町追分のシダレザクラは、樹高は八・五m、目通り周囲三・〇五mを計り、現在のところ大町市内に見られる最大の個体で、均整のとれた樹形をもっています。
このシダレザクラが生息する地は、大黒町追分と言われ、造立年代が江戸時代末嘉永五年(一八五二年)建立の石造大黒天像の西側に並び「大黒様のシダレザクラ」として、住民に親しまれています。
シダレザクラは推定樹齢百五十年と考えられ、石造の造立年代とほぼ重なり、記念樹としてその当時植えられたという可能性も考えられます。
花は、二・四−二・六cmの淡紅白色で、花期は例年四月中頃です。